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「多言語子育て」、「多言語習得」などに関するブログ「まるりん(マルチリンガル=多言語)」




「省ビジネス」のすすめ

 
 ビジネス繁栄を狙うなら省くことに商機あり!省ビジネスで21世紀に生き残れ!

 

「省(く)ビジネス」の時代がはじまっている。20世紀(大量生産大量消費)型商品・サービスにいろいろな限界が見え始め、見捨てられるもの増えている。品質に加えて「価格、健康、環境」の3Kがその主な要因だ。省くビジネスに商機が拡大/既存ビジネスは、省かれないためこそ、心底CSRの観点から、その存在意義のチェックが必要だ!

 

たかが?レジ袋を「減らすため」の買物袋がここまでの人気を呼んだ。アニヤ・ハインドマーチのエコバッグは、20074月の英国での発売以来、日本を含め、世界各国で大反響を巻き起こした。バッグはコットン素材で価格は2100円(税込み)。レジ袋削減をうたって英国の女性デザイナーがデザインし、人気モデルや映画女優ら“セレブ”が持つバッグとして世界的に人気が沸騰。昨年春のロンドンでの先行販売では1時間で2万個が完売、ネットオークションで定価の10倍以上の値がついたという。日本では7月に東京・銀座の直営店に客が殺到し、店側と客の小競り合いも、警官も出動するほどの騒ぎになった。(産経新聞715日)

この商品は、同社として「世界中の人々に、環境問題を自分の問題として真剣に考え直すための、一つのきっかけ、メッセージとなれば、という意図で企画、製造された」。そのため、期間・数量限定販売であり、同商品の再販の予定はないが、エコバッグは2007年の日本のヒット商品ランキングには、軒なみ顔を出すことになった。たとえばSMBCコンサルティングの2007年のヒット商品番付では「関脇」にランクインした。

筆者は、これからの経済社会を考える上で、このような「削減」などに関連した「省ビジネス」が重要な鍵になると感じている。「省ビジネス」とは、どんなビジネスか。

 

「はぶく」「かえりみる」ことにチャンス


毎日、地球温暖化対策をはじめとする環境ビジネスの記事が新聞などマスコミをにぎわせない日はなくなり、いまや環境ビジネスにチャンスがあるのは当たり前の時代となった。環境ビジネスうんぬんすることの意義はうすれ、21世紀の経済社会を見るうえでカギとなるであろう「省ビジネス」の時代がはじまっている。では省ビジネスとはどのようなものか。

「省」という漢字は、「はぶく」「かえりみる」の2つの意味がある。省ビジネスとは、産業革命以来の近代産業文明の商品・サービスは、地球上の生物同様、工業技術の進歩などにより、不断に進化し、量的にも拡大してきた。しかしいまや地球環境の容量などの制約要因といった大きな変化を必要とする兆候が明確になってきており、大絶滅=大規模淘汰の時代・を予感させる。つまり多くの商品・サービスで、変化への対応が不十分なものについて「はぶく」「かえりみる」ことが必要になり、「淘汰」がおきる分野が多くなると考えられ、そこにビジネスチャンスがあると言える。筆者がいう「省ビジネス」とは、一言でいうと「既存の商品・サービスの消費を減らすことに役立つビジネス」である。こうした変化が起きるところとして、おもに3つの分野に整理できる。

 

              コスト・環境: コスト削減や環境対策のために、従来使われている資源・エネルギーなどを省く商品・サービス

       健康・安全: 健康や安全のため、従来の生活でもたらされた過剰な何かをそぎ落とす商品・サービス/従来からある商品・サービスへの依存から脱出することを支援する商品・サービス

              品質: 従来からある商品・サービスの舞台裏の品質情報がわかり健康面などから魅力が薄れたり、品質不足を含む不正が明らかになり、既存の商品・サービスよりもより「本物」と考えられる商品・サービス

「省ビジネス」の例を図表1にまとめた。既存の商品・サービスの改善に関連する事例は原則として除いている。

これまでは、つねに既存の商品・サービスよりも便利だったり、高品質、安価なものが登場することがほとんどだった。しかし、いまやその根底を否定し、むしろ旧来の、伝統的な商品・サービスに回帰することが増え始めているようだ。たとえば、ヤマト運輸が、宅配便を一部、自動車から、一部、自転車がひくリヤカーに置き換えた、という例だ。またNPO法人 環境共生都市推進協会が運営する「ベロタクシー」という三輪自転車タクシーも注目だ。渋滞で停まっている車の脇をスイスイ走れる。ベロタクシーの初乗り料金は、大人300円。おもな収入源は、車体の広告料だ。排出ガスゼロのベロタクシーの広告は企業のイメージアップになると、大手企業がこの広告を活用している。

記載されている課題や代替の効果について、必ずしも筆者がそれを保証、支持するものではないが、課題をもつ既存の商品・サービスにおきかわるこうした省ビジネス的な商品・サービスが今後ますます増える時代にはいってきたといえる。なぜか?


図表1 「省ビジネス」の例

分野

省く/脱却する対象

課題(注)

代替後(注)=省ビジネスの例

関連する会社、業界等

①コスト・環境

 

自動車

l         駐車場所

l         維持コスト

l         燃料費高騰

l         運動不足

l         安全上の不安

l         アルコール

自転車+リヤカー

ヤマト運輸、㈱ワイズギア(リッキー)など

自転車通勤

自転車業界、シマノほか

自転車タクシー(ベロタクシー)

NPO法人 環境共生都市推進協会

エネルギー使用機器・設備

エネルギー価格上昇により、経費、省エネルギーの必要性増大

エスコ(ESCO)事業

ファーストエスコ、省電舎ほか

クールビズ/ウォームビズ

繊維・衣料各社

あったか寝具/暖かめの寝具や部屋着

繊維・衣料各社

非電化製品(除湿機、冷蔵庫など)

非電化工房(藤村靖之氏)

光ダクトシステム(自然光による照明)

日建設計、㈱マテリアルハウス(東京都大田区)

電気不要自動ドア

㈱有紀(福島県会津若松市)

②健康・安全

 

油など高カロリー食品、高コレステロール食品

肥満、メタボリック症候群や脳卒中等の健康問題

 

ウォーキング、ジョギング

靴メーカー各社

万歩計

 

オムロンなど

食べたもののカロリーを記録するレコーディング・ダイエット本

岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)35万部突破(イメージ改善と食費削減効果)

低カロリー食、ダイエット食品、宿泊プログラム

ダイエット産業各社、断食プログラム

たばこ

自分および周囲の人の健康への影響

禁煙グッズ

ジョンソン・エンド・ジョンソン(ニコレット)、マルマン(禁煙パイポ)

医薬品、ワクチン、手術

効果がない可能性が一部の調査等で指摘

代替医療(米国では西洋医学市場を上回る)

代替医療業界

レジ袋、箸、ペットボトル

資源の消費、ゴミの発生

マイバッグ(エコバッグ)=再使用可能な買物袋、マイ箸、マイボトル、

繊維各社、流通各社、サンリオなど。

食品添加物

一部に健康への影響を指摘する説

着色料、保存料などを無添加の商品が増える

セブンイレブン(2001年から保存料と合成着色料の使用を弁当、おにぎりなどのオリジナル商品でやめた)

砂糖、牛乳、肉

一部に健康への影響を指摘する説

マクロビオティックなどの食養法(玄米菜食)、やベジタリアンの人気が高まる

自然食品業界、新谷 弘実『病気にならない生き方』がミリオンセラーに

農薬

一部に健康・安全に影響するとの説

無農薬野菜の市場が拡大

有機食品業界

③品質

大量生産型加工食品

商品イメージとかけはなれた原材料(ほとんど天然素材不使用など)

原材料に自然素材のみとする食品

「自然食品」業界

食品、建材など

産地、賞味期限、品質基準達成などの偽装等のルール・約束違反

ルール順守などイメージが良好な代替メーカーやブランド

ライバル会社あるいは異業種

注:

      省ビジネスかどうかの判断に、絶対的な基準の設定は難しく、あくまで相対的なものである。

      既存の商品・サービスの改善に関連する事例は原則として除いている。

      記載されている課題や代替の効果や関連企業・業界について、必ずしも筆者がそれを保証、支持、肯定的に評価するものではない。そこに課題がないと考えているわけでもない。

 

 

省ビジネスのニーズが増える理由


なぜ省ビジネスが必要とされるのか。それは、いろいろなものが、特に「先進国」の人類にとって、「質」に疑問符がついたり、「過剰」になったものが、増えてきているからだ。たとえば栄養も、過剰なのであり、一部で栄養のかたより・不足の人がいるものの、より大きな問題は一貫して肥満問題であり、たとえば日米で増加を続けている。何を足すか、ではなく、何から逃れるか、何を省くか、が決定的に重要になってきている。一方、商品・サービスの原材料、製造方法などについて透明度が高まらざるをえないトレンドもある。以下の図表2を見ていただきたい。(図表2は省略)

世界的には人口が増え、経済が成長し、大量生産・大量消費が拡大することで、自然環境などの需要能力に限界が見えている部分がある。大量消費によって、環境や健康が蝕まれている。こうした以下のような変化が生じている。

変化1.資源・食糧価格上昇。資源・食糧価格の高騰で、数多くの商品・サービス価格で値上げが始まっており、企業と消費者の節約志向が強まっている。 

変化2.環境問題も国内外で深刻化している。地球温暖化の加速を示す、世界各地の氷河後退などの証拠が増加しているのに、日本は京都議定書の削減目標を守れず追い詰めらている。また、隣国中国の大気汚染が日本に影響を及ぼしている可能性が指摘されたり、中国などの森林保護強化で、割り箸の価格上昇にもつながるなど、1の資源・食糧価格上昇にもつながっている。

以上、1資源・食糧価格上昇と環境問題深刻化により、コスト節減や環境対策の両面から、省資源、省エネルギーを支援するビジネスにチャンスが広がっている。

変化3.健康・安全意識が強まる: 食生活の欧米化で、メタボリックシンドローム、生活習慣病が増え、カロリー・油脂・砂糖などを制限するニーズが増大した。1960年と2005年で、日本人の食生活(消費量)を比べると、油脂類は約3倍、肉類は4倍以上になり、逆に米は2分の1になり野菜も若干減っている。一方、がんの死亡率は増え続け2.5倍となっており、食生活変化との関連を指摘する声が多い。(島田 彰夫『伝統食の復権』)。また、たばこやアルコールの害への認識が強まり、制限・規制が強化されてきている。こうしたことで、②健康・安全: 健康や安全のため、従来の生活でもたらされた過剰な何かをそぎ落とす商品・サービス/従来からある商品・サービスへの依存から脱出することを支援する商品・サービスのチャンスが広がっている。

また、インターネットなどのIT(情報技術)の発達や、企業の社会的責任(CSR)重視の風潮が定着するなかで、情報の共有や、内部告発がしやすい世の中になった。こうして、商品・サービスの原材料や製造方法などについての情報も外部に知られやすくなった。舞台裏がみやすくなったのだ。

変化4.        舞台裏が見えやすく: 内部告発の増加などで商品・サービスの舞台裏の賞味期限や産地などのウソ・不正が次々と明らかになっている。本物志向になってきている。

以上のような理由で、図表2にあるように①コスト・環境重視、②健康・安全重視、③品質(本物)重視、という観点から、変化に対応できない商品・サービスが一部淘汰される動きが見てて来た。つまり、「かえりみる」「はぶく」ことにチャンスが拡大する動きが見えてきた。

 

増えているヒット商品


実際、「省く」に関連した商品が堂々と主流のヒット商品ランキングに顔を出す時代となった。図表3には、「ヒット商品番付」で、1999年以降にランクインしたなかで、省ビジネスに関連しているものをピックアップしている。2007年には、上位陣にあるなかで2つが省ビジネス関連だといえる。関脇のエコバッグのほか、メタボリック症候群からの脱却をめざす人が増えたこともあり、「ビリーズブートキャンプ」は大関にランクされた。前者は、レジ袋を省くためのものだが、後者は、太りすぎた体からの脱却をアシストするものだ。

 首都圏の電車、地下鉄で共通で使えるICカードであるSUICAPASMOWiiなどのIT関連機器を入れているが、これは、世の中のIT化が省ビジネスとなり、環境問題の解決に貢献する可能性があることから、不確定要素はあるが、大きな可能性を秘めているため、あえて含めている。たとえばSUICAPASMOは、繰り返し利用することにより、従来からある切符や磁気定期券やプリペイドカードの使用量・リサイクル量がはるかに少なくてすむようになるから省ビジネスであるともいえる。

JR東日本によれば[i]Suica 発行前の2000 年度に対し、Suica 発行後の2001 年度~2006 年度の資材調達量を累計した推計値で、Suica が繰り返し利用されたことにより投入不要となった資源(累計)は、近距離切符が790トン、磁気定期券が120トンになる。Suica カードの発行枚数の重量は累計100 トンであり、差し引き810トンの資源が節約された計算になる。ただし、キオスクなど小売店でこれらのカードに対応する端末が設置されるようになり、その分電力消費は増えてしまう。資源投入量や廃切符の処理にかかわるCO2が減ったとしても、差し引きC02発生量が増えている可能性がある。省ビジネス関連のものであっても、一般的に環境にやさしいとされる商品・サービスと同様、他方で、なにかが増えてしまう「副作用」(トレードオフ)が発生する場合はあり、注意が必要である。そちらがあまりに大きい場合は、省ビジネスとしての意味をもたない場合もありえる。JR東日本は、2007115日付けのプレスリリースで、「Suica DE Eco キャンペーン」によるマイバッグ配布などを11 9 日(金)より実施するとし、「環境省の推進する国民的プロジェクト「チーム・マイナス6%」の一員であるJR東日本及びJR 東日本リテールネットが、環境への取り組みとして、NEWDAYSKIOSKBOOK EXPRESS の店舗において実施するキャンペーンです」としていてそのなかで、以上の資源投入量の削減を説明しているが、SUICA導入によって、電力使用量やCO2が増える可能性については、触れていない。厳密な計算は大変であろうが、SUICAPASMOが環境にいいのか、「省ビジネス」に該当するかどうかを判断するためには、このあたりに不確定要素が残っている。

しかしIT(情報技術)あるいはICT(情報通信技術)の発達のトレンドはとめられないだろう。これを活用して、人やモノの移動・運送を省いて省エネルギーや他の環境負荷削減を実現し、それが、IT,ICT自体が消費するエネルギー消費や環境破壊を上回れば、その事業リスクは多いに軽減され、またチャンスも拡大 する。

 

図表2 必要となる理由と「ヒット商品」

「省」の3つの分野

「省」が必要となる4つの理由

省ビジネス関連の「ヒット商品」(1)

(カッコ内はヒットの年と筆者のコメント)

①コスト・環境重視: コスト削減や環境対策のために、従来使われている資源・エネルギーなどを減らすことに貢献する商品・サービス

1.       資源・食糧価格上昇: 資源・食糧価格の高騰による商品・サービス価格上昇が続き、節約志向 

2.       環境問題深刻化: 地球温暖化の証拠増加するなか、京都議定書の削減目標を守れず追い詰められる日本。その他の環境問題も国内外で深刻化。

l         エコバッグ(2007、レジ袋削減)

l         『不都合な真実』(2007、地球温暖化)

l         PASMO(2007)、「Suica(2002)ともに使い捨て式プリペイドカードと切符が不要に。資源消費とゴミが減る

l         ケータイ小説(2007紙を使わない小説媒体)

l         Wii(2007、輸送手段による移動が不要な娯楽)

l         愛知万博(2005、環境がテーマ)

l         LOHAS2005、環境志向)

(注2)

②健康・安全重視: 健康や安全のため、従来の生活でもたらされた過剰な何かをそぎ落とす商品・サービス/従来からある商品・サービスへの依存から脱出することを支援する商品・サービス

 

3.健康・安全意識が強まる: 食生活の欧米化で、メタボリックシンドローム、生活習慣病が増え、カロリー・油脂・砂糖などを制限するニーズが増大。/たばこやアルコールの害への認識が強まり、制限・規制が強化

l         LOHAS2005、健康志向)

l         「ヘルシア緑茶」(2003、体脂肪の減少)

l         豆乳(2003、脱牛乳)

l         「ビリーズブートキャンプ」(2007)

l         緑茶関連:  「ヘルシア緑茶」(2003)、“お茶飲料”戦争(2002) 、茶飲料(2001) 、「生茶」(2000)・・・(砂糖を省いた飲料の代表格)

l         「植物性乳酸菌ラブレ」(2007、脱動物性食品)

l         「黒烏龍茶OTPP(2006、血中中性脂肪上昇を抑える)

l         寒天ダイエット料理(2005、低カロリーと排毒●?)

l         スチームオーブンレンジ(2005、油落とし)

l         『買ってはいけない』(1999、食品添加物等の批判)

③品質重視: 従来からある商品・サービスの舞台裏の情報がわかり健康面などから魅力が薄れたり、見捨てられる商品・サービス

 

3.       舞台裏が見えやすく: 内部告発の増加などで商品・サービスの舞台裏のウソなどの不正が次々と明らかに。賞味期限改ざん、ニセの原材料の使用、添加物漬けの食品

l         LOHAS2005、原材料などに本物重視)

l         『買ってはいけない』(1999、食品添加物等の批判)

注1:SMBCコンサルティング「ヒット商品番付」(http://www.smbc-consulting.co.jp/BizWatch/Hit/)に1999年以降ランクインしたものから省ビジネスに関連するものを抽出。説明は筆者が加えた。「」…商品名 『』…書籍名・作品名。なお「ヒット商品番付」の対象となる商品は、個別の商品だけでなく一定のカテゴリーの商品群や人物・社会現象などを含む。番付の順位は、出荷台数・売上高等の実績だけでなく、その商品がマーケットに与えた意義やインパクト・今後の成長性などを総合的に判断して決定されている。■省ビジネスかどうかの判断に、絶対的な基準の設定は難しく、あくまで相対的なものである。■既存の商品・サービスの改善に関連する事例は原則として除いている。■記載されている説明等について、必ずしも筆者がそれを保証、支持、肯定的に評価するものではない。そこに課題がないと考えているわけでもない。

 

注2:コスト削減商品は、「ヒット商品番付」にはないが、多数ある。例は図表3を参照。

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省ビジネストレンドに対応するには


 今後、省ビジネスの市場はどうなるか。バーチャルでなく、実物の商品に関する省ビジネスについては、ますます拡大するだろうだろう。人間にとってなくてはならないが野放図に増やすことができない環境問題などが発生していると考えられる以下のビジネスに関して、増やすビジネスと減らすビジネスを考えてみよう。

 

    世界の自動車台数:  増やすビジネス vs 減らすビジネス

    世界の水産資源消費: 増やすビジネス vs 減らすビジネス

    世界の電力使用:   増やすビジネス vs 減らすビジネス

 

増やすビジネスと減らすビジネスとの間には、改善やイノベーションによって、増やそうとする動きと、消費量自体を減らすビジネスのせめぎあいが激しくなるだろう。現状・当面は、増やすビジネスほうの市場が圧倒的に大きいだろうが、今後、減らすビジネス、つまり「省ビジネス」のほうにリスクがより少なく、チャンスがより大きい、可能性が高まっていくだろう。

 既存のビジネスが生まれ変わって省かれないようにするため、また、新しい省ビジネスを創造するため、考えるべきは、顧客への価値ある商品を提供する能力を確保したうえで、幅広いステークホルダーを戦略的に確実に考えて適切に、かつ心底誠実に対応・貢献してく企業の社会的責任(CSR)に軸足をおいた経営であろう。こうしたCSR経営を推進するにはさまざまのツールが開発されているが、ここでは、消費者関連事業(B to C)に係わる簡便なチェックリストの例として図表4に、CSRに、スタイリッシュであるという特徴を加えたLOHAS(環境と健康に配慮したライフスタイル)からのチェックシートを参考までに掲げておく。既存事業や新規事業のリスク・チャンスを、CSR面からの厳しくチェックすることが有効である。一部事業の評価のみでは免罪符的なものとなる恐れがある。会社全体でも評価することが重要である。こうしたツールをもちいて省ビジネスの観点から、より多くの企業が、お金儲けと現代社会の問題解決を同時達成することを期待したい。

 

図表 4 ロハスからの事業活動評価シートの例

 

採点方法: 10項目、15点満点(ただし小規模企業では仕組みの必要性は低いこともある。満点の必要はない) 
Yes 結果が出ている=1点
■結果を出す仕組み(手順・体制)がある=0.5

ロハス5原則

評価項目 

評価(結果+仕組み)

根拠

原則1 LOHAS的な価値観をミッションに取り入れ、企業活動の指針としている

さまざまなステークホルダーを心底思いやる経営理念が社内にいきわたっているか

 

 

環境への配慮を心底思いやる経営理念が社内にいきわたっているか

 

 

誠実・正直な事業活動を行う経営理念が社内にいきわたっているか

 

 

原則2 顧客の健康に寄与する製品やサービスを(スタイリッシュに)提供している

製品やサービスがお客様の、心または体の健康の増進に真に役立つち、

 スタイリッシュ(デザイン性)に配慮しているか

 

 

製品やサービスにおいて、お客様の心または体の健康を害する恐れはないか
例:健康食品であっても、保存料や合成着色料など健康リスクを否定できない化学物質を含んでいないか

 

 

 

原則3. 持続可能な地球環境に配慮する企業活動を行っている

 

製品やサービスが、環境問題の解決や緩和に真に役立つか

 

 

製品やサービスが環境によいとしても別の環境問題を悪化させる恐れはないか

 

 

原則4.従業員の能力を伸ばし、幸せで豊かな生活をサポートする職場環境の整備やワークス

従業員の心身の健康は、よい状態か

 

 

従業員の満足度は、よいレベルか

(能力開発、ワークライフバランス、人権配慮など)

 

 

原則5.顧客などステークホルダーの共感を得るコミュニケーションを実践している

 

お客様、従業員、取引先、株主、債権者、官公庁、市民団体、などステークホルダーとのコミュニケーション(エンゲージメント=おつきあい)の手順・実態は、満足できるレベルか

 

 

注: ロハス5原則はロハス・ビジネス・アライアンス(http://lohas-ba.org/about/index.html)作成。但しアンダーライン部分は筆者が加筆修正。また評価項目は筆者作成。一部事業の評価のみでは免罪符的なものとなる恐れがある。会社全体でも評価することが重要である。